きっかけは1枚の歪んだ失敗写真だった。
日本語でシャシンを「真(まこと)を写す」と記述する通り、写真とは真実を捉えたものだ。
対象が確かにそこに存在したという証明である。ゆえに「写真の本質は記録である」と説明される場合が多い。
この原則に従えば、きっかけとなった失敗写真もまた事実だ。どんな世界が写し撮られていようとも間違いなく存在した。
自分がそう知覚出来なかったとしても撮像面上に世界がそのように投影されたのだ。
そう考えてみると撮影とは「自分が観測した世界を写し撮る行為」ではなく「カメラに世界をそのように見せる行為」なのかもしれない。
商品撮影やポートレート撮影の現場では、ライティングなどによって被写体がより美しく見えるように拵え、最も魅力的に輝く瞬間を捉えようとする。
この様子を反芻してみると「撮影とはカメラに世界をそのように見せる行為」という解釈は腑に落ちるものがある。
カメラが捉えた世界の結果がいわゆる失敗写真だったとしても、そういった世界が確かにそこに存在していたのかもしれない。そのように想像が孵化する瞬間と出会うのは楽しいものだ。
すべてGFX 50RとGF50mmF3.5 R LM WRの組み合わせで撮影しました。
GFXシステムが持つハイレベルな描写力と緻密な解像性能、そしてフィルムシミュレーション: ACROSの階調再現性は深みのある表現をもたらしてくれました。
IBISを持たないシンプルな構造、軽量・コンパクト、ボディのほぼ中心に光軸を持つ等、GFX 50Rを構成する全ての特徴が、今回の写真を撮る上で大きな役割を担っています。
GFX 50Rだからこそ写し撮ることが出来た世界をご覧下さい。
記
豊田慶記写真展 「孵化」
豊田慶記
(敬称略)
2021年10月27日(水)~11月15日(月)
10:00~18:00(最終日は14:00まで)※ 毎週火曜休館
※当面の間、新型コロナウイルス感染防止などの観点より
営業時間を短縮とさせていただきます。
※写真展・イベントはやむを得ず、中止・変更させていただく場合がございます。
予めご了承ください。
富士フイルムイメージングプラザ東京 ギャラリー
■豊田慶記
1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真を志す。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
スタジオマン・デジタル一眼レフ開発を経てフリーランスに。カメラ雑誌等で執筆も手掛ける。
2014年よりカメラグランプリ外部選考委員。
黒白写真が好き。
https://www.toyotayoshiki.com/
約35点
Ⓒ豊田慶記
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