旅する写真家「稲垣徳文」が、アジアに点在する古刹を巡り撮影した写真展。写真家を夢見て、修行のつもりで世界を旅した1990年代。25年あまり経った今も、当時訪れた各地を再訪し続けている。2010年に西チベットの霊峰カイラス山を訪れてからは、アジアの古刹を巡ることがテーマのひとつとなった。その中でもカンボジアのアンコール・ワットは、写真の黎明期である19世紀中頃より記録が残る史跡だ。他の史跡同様、幾多の天災や戦禍を乗り超えてきた。長い政情不安から解放された後、近年は、オーバーツーリズムの影響により、再び荒廃の危機にさらされている。
これまで写真家として得た教訓は、撮影の機会があるならばそれを決して先延ばししてはならないということ。今世紀初頭の佇まいを記録すべくレンズを向けている。撮影に使用した大型カメラ『ディアドルフ』8×10(エイト・バイ・テン)のフィルムサイズは35mm判に比べおよそ60倍の面積があり、最大級のフィルムから得られる高画質が特徴のフォーマットだ。2018-19年には富士フイルムの中判デジタルカメラ『GFX50R』を使いアンコール・ワット(カンボジア)とボロブドゥール(インドネシア)を再訪し撮影を試みた。GFX50Rは大型カメラでは撮影困難な東南アジアの激しいスコールの中でも使用できる耐候性に優れ、小型軽量ながら8×10を凌ぐ解像力を発揮する。本写真展ではカラー作品のほか、階調豊かなモノクロ写真であるゼラチンシルバープリントに加え、19世紀の写真技法「鶏卵紙」も同時に展示。フィルムとデジタルそれぞれの表現力をお楽しみください。
記
稲垣徳文写真展『巡礼』2010-2020
稲垣徳文
(敬称略)
2020年8月26日(水)~9月14日(月)
10:00~19:00(最終日は14:00まで) ※ 毎週火曜休館
※ 写真展・イベントはやむを得ず、中止・変更させていただく場合がございます。
予めご了承ください。
富士フイルムイメージングプラザ東京 ギャラリー
■稲垣徳文
1970年東京都出身。法政大学社会学部卒業。在学中より写真家・宝田久人氏に師事する。朝日新聞社「AERA」編集部を経てエディトリアルを中心に活動する。富士フイルムXシリーズはX-Pro1以来のユーザー。「アジアの古刹巡礼」と「ウジェーヌ・アジェが写したパリの再訪」をライフワークにしている。東日本大震災後、太陽光でプリント可能な鶏卵紙による作品制作に取り組んでいる。日本写真協会会員。
写真展
1991年『タシュクルガンへの道』オリンパスギャラリー
1995年『大陸浪人』ドイフォトプラザ
2007年『In the viewpoint of Asia / Tokyo』 gallery Litfasssaeule Munchen
2011年『巡礼』Mt.Kailasコニカミノルタプラザ
2017年『HOMMAGE』アジェ再訪 gallery bauhaus
2019年『10th gelatin silver session』参加 AXIS GALLERY
2020年『ROOTS』アジェとニエプスを辿る旅 gallery bauhaus
約36点
Ⓒ稲垣徳文
Ⓒ稲垣徳文
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